【前回の記事を読む】兄妹で何かを決めるときは、"5色の輪"のくじで決めていました。母親に読んでもらう本、アップルパイを味見する順番…

二.〝輪〟 の思い出

「お父さん、ここ王宮に架かる橋の下側は、すべて半円形のアーチ型になっています。どうして、あのように造られているのですか?」

エリオットが橋を指さしてそう聞くと、アルバートは五人を橋のたもとまで連れて行きました。そして、いくつもの黒い石を細長い石の“クサビ(楔)”で繋(つな)いで半円形にしていること、そうすると丈夫な橋になるのだということ、この橋を設計して造らせたのはエドワード国王であることなどを説明してくれました。

他の王子や王女たちも、この話を真剣に聞いていたので、質問をしたエリオットは少し誇らしくなりました。しかも、この日は庭園からの帰り道、ユートピリッツの民謡(みんよう)をみんなで歌いながら歩いてきたので、輪のくじ引きで最後になってしまった悲しい気持ちは、すっかり消えていました。エリオットは音楽が、特にみんなで歌うコーラス(合唱)が大好きでしたから。

五人の王子と王女たちは、子どもの頃くじ引きとして使っていた五色の輪に、それぞれの懐かしい思い出をよみがえらせていました。王さまも、そのことは五人の様子を見ればすぐにわかります。

五色の輪を手にした王さまは、こう続けました。

「お前たちにとってこの五色の輪は、子どもの頃の記憶と、何よりアルバートとクリスティーナの思い出が詰まった大切なものだろうな。

実は、この輪の五つの色は、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカ、アジア、そしてオセアニアの五大陸を表しているのだそうだ。この輪を繋げることで、お互いが連携(れんけい)し合う世界を願っているのだと思う。

お前たちには、この五つの輪から一つを選んでもらい、その輪の色で世界一強いものを探し出す旅の“行先”を決めることにする」