広いテキサス州を越えるとルイジアナ州。ここまで来ると、アメリカの内部に入り込んだという実感がある。

ちょっと前に見たジョン・ボイト主演のアメリカ映画「真夜中のカウボーイ」の中でテキサス出身のお調子者の主人公がバスでニューヨークまで旅をする場面があったが、それと同じことをしている自分もなんだか映画の主人公にでもなった気分で、バンジョーの主題歌を頭に浮かべながらのまったく疲れも恐れもない快適な旅。

今度はお母さんに連れられた10歳くらいの黒人の女の子が隣に座ってきて、珍しそうにしきりにこちらを見るので、「日本から来たんだよ」というと、「じゃ、クラティーをやるの?」という。 「クラティーって何?」と聞くと、「クラティーよ。ク・ラ・ティー!」という。

よく説明を聞いて見ると「空手」のことらしい。日本人なら空手をやっているんではないかとの質問だった。大笑い。「空手はやってないけど、少林寺拳法という似たものをやっている」と答えると興味津々で大喜びだった。

ルイジアナ州に入ってからは、徐々に湿度が高くなって来たのを感じる。周囲の植物も乾燥地域の低木から大きな緑の木々やそれに絡みついて垂れ下がる白っぽいコケのような植物が目に付くようになる。

そして、やっと、乗り換えの地バトン・ルージュに着いた。運転手によく頼んでおいたので、「ここで乗り換えだよ」と親切に教えてくれた。この地名はフランス語で「赤い口紅」という意味ではないかと思う。どんないわれか知らないが、もし本当にそういう意味なら、ずいぶんと色っぽい名前である。