病院のパンフレットには術後、15分程度のウォーキングが可能であることが載っていましたが、母の年齢でそこまでの回復は期待しませんでした。立ってトイレに行けるだけで十分です。私にはなぜか、事態が良い方向に進んでいく予感がしました。

母の説得には昔から仲のよい叔母(亡き父の妹)に協力をお願いしました。母は年上の人の言うことには素直に従う傾向があるからです。その叔母は母より年上でありながら、足が大変達者なのです。実家から歩いて30分くらいのところに叔母の家があるのですが、いつもそこから歩いて遊びに来てくれるのです。

叔母が来ると取るに足らない女同士の井戸端会議が始まるのですが、母にはそれがとても楽しかったのです。「冷凍焼きおにぎりが簡単で美味しいの」と叔母に勧めていました。私ならばそれに海苔を巻いて食べます。私は在宅のときに叔母が来ると、お茶とお菓子を出して、自分の部屋に引っ込みます。

そして案の定、叔母の説得が功を奏し、母は手術を受けることを了解。母の了解が必要だったのはその後の1階床のリフォーム工事のときぐらいです。その後、すべてのことを私が決めました。

3 人工関節手術〔2011―3〕

手術は関節の痛んでいる部分を取り除き、人工関節に置き換えるのです。長年の使用による摩擦で軟骨がすり減り、変形してしまうことが原因です。主として股関節と膝関節があり、両者は密接に関連しあっています。母の場合は膝関節でしたが、腰痛も訴えていたので、おそらく何らかの関連はあるのでしょう。

関節機能が回復しても、筋力があまりにも衰えているとリハビリに時間がかかり過ぎてしまいます。医師から筋力トレーニングの重要性について説明がありました。教えてもらった筋トレ方法は、イスに座ったままでできる簡単な運動です。足のつま先を膝の高さまで水平に持ち上げ10秒間維持し、元に戻すことを繰り返す、というものでした。この体操を毎日、3セット。

私がいちいち言わなければ、母は自分からやろうとしないのです。こちらも忙しいので、言って、やらせて、それを見届けることは不可能です。そのときの母の状態は認知症の症状もなかったので、本人がやろうとすればできたはずです。晩年、母は頻繁に転倒を繰り返しましたが、退院後の筋トレ不足が原因だったことも確かです。

 

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