このガステーブルでホワイトソースを作るとする。バターを温め小麦粉を入れてかき混ぜる。様子を見ながら牛乳を少し注ぐ。固まって均一になってきたら、さらに牛乳を入れかき混ぜる。ということを繰り返しながら、好みの固さになるまで牛乳でゆるめていく。

あせって、一気に牛乳を入れたりすると、均一にならず、いわゆるダマになってしまい、失敗である。この失敗は、鍋の温度が一気に下がってしまうために発生する。じゃあ、鍋の温度が高ければいいのかと言えば、高過ぎれば焦げてしまうだろう。

ソースの固さを均一にするための、かき混ぜる動作と、牛乳を入れたあとの鍋の温度の上昇と、両者がちょうどいい具合に進行しないと、この調理は成功しないのである。だから、鍋の温度の調整が重要なのであるが、火力ツマミを動かすことで、鍋の温度を素早く調整するのは困難なので、温度が上がり過ぎそうと見れば、鍋をいったんコンロからはずす、という動作が必要になる。

ところがである。このガステーブルは空燃焼を許さない。だから、鍋をコンロからはずすと火が消えてしまう、としたら誰しも腹が立つだろう(たぶん)。

そこで、このガステーブルは、鍋をコンロからはずすと火が弱まるようプログラムされている。最初に鍋をかけて火を付ければ、あとから鍋をはずしても火は消えないわけである。そうして、再び鍋をセットすると火が強まる。そこまではいい。

しかし、再び鍋をセットして火が強まるまでがとても遅い。と言うか、とても遅く感じる。測ったことはないが、二秒ぐらいであろうか。この二秒ぐらいを待てないのが普通の調理人なのである(たぶん)。

実は、こうした事態を避ける方法はある。上述したAという設定変更をあらかじめしておけば、鍋をコンロからはずしても火は弱まらないのである。しかし、調理の途中でそのことに気付いて設定変更するのは、すごろくで言うと、振り出しに戻るということなので、とても嫌なのだ。

まとめよう。筆者にとって、このガステーブルが悩ましいのは、空燃焼が原則できないために、調理の工程で空燃焼を必要とする場合、あらかじめ設定変更を行なわねばならないのだが、その設定変更が面倒である。あらかじめの設定変更を忘れていて、調理の途中で設定変更を行なうのは、もっと嫌だ。ということである。

悪いのは、筆者なのか、ガステーブルなのか。読者の判定はいかがであろうか。

設定変更さえ面倒がらずにちゃんとやればいいではないか、悪いのは筆者だと言いたいであろう。しかし、この話にはまだまだ続きがあるのだ。

 

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