【前回の記事を読む】2000年代に入り革命的に進歩した「白内障手術」。折りたたみ式眼内レンズの登場や日帰り手術が可能に

はじめに──増補改訂にあたって

「医師にお任せ」の時代は過去のものです。患者さん自らが主体的に医療を選択できる時代になった今こそ、正しい知識を身につけていただくことが重要だとつくづく感じます。

そのために旧版では、視覚機能の重要性や白内障に関する基礎知識から、白内障手術の実際、眼内レンズの選び方、実際に私のクリニックで白内障手術を受けた方の体験談まで、専門知識のない方でも理解しやすいようにできるだけわかりやすく紹介しました。

特に見え方を劇的に改善する多焦点眼内レンズと、多焦点眼内レンズの精度を高めるとともに眼の組織への負担を軽減する先端医療機器について紙数を割いて説明しました。

改訂最新版でも、この方針は継続しつつ、この6年間に起こった新たな眼科医療とそれを取り巻く環境の変化や、旧版では説明不足と思えた項目について加筆修正しています。

最も大きな修正を施したのは、多焦点眼内レンズに関する項目です。2019年当時は、公的健康保険適用外の自由診療(自費診療)だった多焦点眼内レンズを使った白内障手術は、その後の制度改正によって生まれた「選定療養制度」──健康保険が適用される治療と適用外の治療を組み合わせることができる制度によって、患者さんの費用負担は軽くなり、それと同時に手術に使われる多焦点眼内レンズは様変わりしました。

改訂最新版ではこの点について情報を更新し、詳しく解説しています。