【前回の記事を読む】「800万円で彼と縁を切ってくれ」再び現れた彼氏の上司でお見合い相手の父に私は……
不可解な恋 ~彼氏がお見合いをしました~
十九時過ぎ、俊雄さんが私の家にやって来た。疲れたような顔をして。
「お疲れ様」
「亜紀もお疲れ様」
「何か、疲れ切った顔してるよ? 仕事、キツイの?」
大きく溜め息をついた後、俊雄さんが呟くように言った。
「……悠希さんが、僕へのプレゼントだって言って、服を大量に渡してきて……」
ああ、例の服か……。
「それで?」
「僕の為に一生懸命選んだって言われて、……お金も結構掛かったと思うし、そう言われたら断れなくて……」
「受け取ったんだ」
「……ごめん。でも、着ないから! ……でも一つ気になる事があって……服はラッピングしてあったんだけど、そこに亜紀のお店の名前のシールが貼られていたんだ。もしかして、彼女、君のお店に来て買ったの?」
「そうだよ。どの服が俊雄さんに似合うか訊かれた。だから、貴女が選んだ物が喜ばれるって言ったの。だって、仕事中だし、一応お客様だし、そう言う以外になかったんだもん」
「そっか……」
申し訳なさそうに溜め息をまたつかれ、私はこの空気を破る為に、話を本題に持ち込んだ。
「今日はね、悠希さんへの対応を俊雄さんと一緒に考えたくて呼んだの」
「対策?」
「そう。今のままじゃ、私、我慢できないよ……! 俊雄さんの会社の社長さんまで来たんだよ? お店に。あなたと別れて欲しいってお金を渡そうとしてきたの」
「お金だって!?」
「そうだよ。今日なんて、八百万渡されそうになって……拒否したらいくらならって」
「社長は本気で亜紀と僕を別れさせようとしてるって事か」
「だから、対策を考えたいの! 悠希さんとその父親に対して」
「でも、具体的にどうしたら……」
俊雄さんが顎に手を置き、目を閉じて考えている。でも、俊雄さんの次の言葉が出てこない。
「……とにかく、俊雄さんは悠希さんにちゃんと断る姿勢を崩さない事! プレゼントも受け取らない事! いい?」
「う……ん、だけど、社長の娘さんだから、無下にはできないよ。断る事はしてるけど、強くは言えなく――」
「強く言うの! ねぇ、私の事、本当に好き?」
「好きだよ」
「それなら、私のためにして。悠希さんはあなたを『くれ』って言ってきたのよ!? お店じゃなかったらキレてたよ! 相手がいくら社長、その娘さんだとしても、強固な姿勢を取らないと、勘違いされるし、押される一方だよ!?」
「そ、それはそうかもしれないけど……。相手が社長じゃなかったら、亜紀の言う通りにできるけど……。……会社をクビになったり、左遷させられたら嫌なのも事実だし」