そして、私が真の起案者であるという事実は、完全に闇から闇に葬られたのです。私の所属するエンジニアリング部門は、もともと事業部への関心が薄く、私がこの事実を上司に話しても、上司は私を弁護するどころか、この話に何の興味も示してくれませんでした。また、私は何のプラスの評価もされませんでした。

ここに至って、私の憤り、ストレスは頂点に達しました。しかし、事業に関与しない、エンジニアリング部門の新人に過ぎない私には、事業担当役員との接点がまったくなく、「あれは、実は私のアイデアです」と訴えることは不可能でした。結局、私は泣き寝入りするしか方法がなかったのです。

ここまで読まれた読者の皆様のなかには「名前や筆跡を全部消して、アイデアを盗むなんて、いくらなんでもそんなヒドイことが現実にあるわけはない。ここに書かれていることは嘘だろう」と思われる方もいらっしゃるかと思います。

正直、そういう経験をされていない方は幸せだと思います。これはいや味や皮肉で言っているのではなく「こんなヒドイ経験はしないほうがいいですよ。経験しても、あなたの人生にとって何もプラスにはなりませんから」という観点からの率直な私の意見なのです。

私がここに書いたことは、まぎれもない事実であり、私は、平気で人の提案を盗む、人を裏切るという「人間の性や本質」を目の当たりにしたのです。

いま、考えても、本当にヒドイ話だと思いますし、いまでも、私の提案を盗んだ連中には腹が立ちます。しかし、これが、私が直面した「現実」だったのです。

次回更新は10月31日(金)、8時の予定です。

 

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