俳句・短歌 句集 母娘 2020.09.14 句集「地雷の如く」より三句 地雷の如く 【第13回】 馬場 美那子 母ひとり、娘ひとり、恋たくさん。 「おひとりさま」とその母の13年を綴るドラマティック川柳句集。 自由奔放にたくさんの恋をしてきた「おひとりさま」な娘。たったひとりの肉親である母は、夫に先立たれて長かった。 ほかに身寄りのない二人なのに、喧嘩して、諦めて、また喧嘩して。恋はすれども、母は捨てられぬ。母への情愛と異性への恋心との狭間で揺れる心情が、おかしみと哀しみを込めながら五七五の17音字に込められた「絆」の物語。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 ありがたや太陽の手の温かさ 目がさめて脱兎の如く嫌い嫌い 幸不幸ふたごのように入れ替り
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『浜椿の咲く町[人気連載ピックアップ]』 【第30回】 行久 彬 2時間あまりの愚痴に絶妙のタイミングで相槌を打つ彼女――流した涙もそっと差し出されたハンカチで拭い… ワインは商工会の助力もありボツボツと旅館、ホテルからも引き合いが来た。商売は順調に滑り出したかに見えた。しかし、予期せぬことが起った。貯蓄蔵を建ててまもなく鵜方に全国規模で展開する酒販売のチェーン店が進出して来たのだ。そのため、近郷の旅館、ホテルはワインだけでなく日本酒、ビールも皆そこへ仕入れを切り替えた。チェーン店は大規模一括仕入れにより値段が安く、とても地元の酒店が太刀打ちできるものではなか…