急いでお風呂に入った。特に唇をごしごし洗った。

女性は鋭い。隠し事は出来ない。嘘をついて、後でばれたら……前に家を出た時の恐怖感が蘇った。

いやいや、危ない。正直に話して良かった。……ただ、一瞬、目を閉じた事は、秘密にしておこう。

でも、里香の唇は、硬かった。香子のように柔らかくなかった。香子の唇が最高だ!

あっ! 来月は香子が、同窓会だ。心配だ。送っていって、帰りも迎えよう。香子は可愛いから、危ない。行かなければいいのになぁ~。

 

月曜日、登録のない電話がかかってきた。

「はい。どちら様でしょう」

「丈哉君、私、里香。同窓会では、ごめんね。改めて会いたいの。時間をください」と。

「悪いが、僕は会いたくない。帰ったら、凄く後悔した。君にキスされた事を妻に話した。隠し事は、後でばれたら、妻は気分が悪いはずだから。悲しい想いや疑われる事が嫌なんだ。妻を愛している。悪いが、連絡しないで欲しい。同窓会に行った事を後悔している」

「……もう、だめなのね」

「そうだ。妻を愛している。僕は、妻が居ないと生きていけない。電話なんかしないでくれ。さようなら」と切った。

同窓会は、もう行かないと決めた。

 

香子の同窓会の当日、僕が緊張している。

香子は、心なしか時間をかけて支度しているように感じる。

支度を済ませて、出てきた。グレー色のワンピース、華やかなネックレスとイヤリング。

う~ん、綺麗だ! 行くなと叫びたいが、男として、我慢だ。

「ねぇ、どう。おかしくない?」

「いや、いいんじゃないかな」と不機嫌に言った。

どうか何事も無いように、無事に終わりますようにと願った。