【前回の記事を読む】九鬼水軍の秘宝伝説──学園に受け継がれる物語が思わぬところから静かに動き出す
第二章 学園の中で宝探し?
「俺の人柄ってなんだ? 礼儀正しいだろ」
「尊大で上から目線な態度はどうかと思うでしょ」
「礼を尽くしていたと思うけどな。とにかく携帯番号教えておくから合議の結果を知らせてほしい」
「わかった。ところで柘植くん家はどこなの。確かもっと前で降りるんじゃなかった。私は次の駅で降りるんだけど」
「遅くなったから送っていこうと思って。家も知っておきたいし」
急に女の子扱いされたことに、戸惑い断りを言い切る柚子。
「いい、いい。私は弱そうに見えるかも知れないけど、こう見えて柔道二十段だから大丈夫。心配しないで」
慌てて変なことを口走ってしまった。気まずい沈黙。
柔道に二十段ってあるわけないだろう、と思う正巳は、
「いやーぁ、頼もしそうだとは思っていたが。そんな高い段持ちだったとは」
「だから、心配ご無用」
「いやーこの薄暗さ。女の子なら誰でもか弱いと勘違いして、やって来る輩もいるかも知れない。未然に怪我人を出さないためにも。そういう人には教えてやらないと。この人は柔道二十段だと」
「あーっなるほどー。勝手にすれば」
駅を出て自分の口走った失言に滅入りながら、柚子は黙ってサクサク歩いていると、
「なかなか松本さんって面白い人だね」
「そんなこと言われたことありません! そこ家だから。ありがとう、もう帰って!」
その時、ガチャ! 玄関ドアが開いた。