「あっ柚子ちゃん。お帰り。えぇっ、何。お友達も一緒。送ってもらったの。どうもすみません。良かったら上がってお茶でもどうぞ」

嬉しそうに、事を運ぼうとしている母に思わず言い切る。

「何勝手なこと言っているのお母さん。もう帰って帰って! はいありがとう。さよなら」

「じゃあ僕は失礼します」

あいつは頭を少し下げると帰っていった。

「えぇいいの? ほんとありがとう」

母は帰っていくあいつに、ちょっと大きな声を送っていた。

「もうお母さん。入って入って。なんで出てきたの」

「あっそうそう、ゴミ出そうと思って。まっ中へ入りましょ。お父さんお父さん柚子ちゃんがボーイフレンドと一緒に帰ってきたのよー」

奥に入りながら、まくし立てる母。何を言うかもう。

「柚子! 本当か!」

怖い顔で問いただしてくる、兄。

「お兄ちゃん? どうしているのよ。お義姉さんは?」

「実家だ。たまには泊まってこいと言ってやった。俺も父さんと呑みたかったし。そんなことより彼氏がもういるのか! 余所はどうだか知らないが柚子にはまだ早いんじゃないか! ねぇ父さんそう思うだろ」

「うっ、うぅーん、そうかなぁー」

口ごもる父であったが、それを見やる母は違っていた。

「何言ってんの! 隆弘は高一の時からいたじゃないの」

「男と女は違う。まして柚子は年齢より子供っぽい。どう考えても早すぎる!」

私を置いてきぼりにして、声が大きくなっていく母と兄。

「もう二人とも止めて。そんなんじゃないし。ただの知り合いだから。騒ぎすぎだよ。着替えてくるから」

「おーうそうか、そうだよな」

安心したように、納得する優しい父だった。

あーあ。うちは親が三人いるような感じだ。兄貴が先頃結婚してうるさいのがいなくなったと思ったのに。よく帰ってくるのよね。まぁ優しいは優しいんだけど年が十五も離れていると、親の気持ちに近いらしくて面倒なのよね。ずいぶん経ってからの子供だったので父母は猫可愛がりするものだから、余計に兄が厳しくなっちゃった。

ともあれ、明日柘植くんのことを話すには話すけど——。

私は絶対いやとして、陽はそれが目的だから情報になる者ならと賛成するだろうな。詩と大和それから蓮はどう思うんだろう。颯太は多分私と同意見だろうと思うけど。