「いや残念だけど、そんなことはない、ホモ・サピエンスで作れる奴はそこそこいただろう。今でもたくさんゴロンゴロンと出てくるからね」
そう言ってギネスを一口含んだが、なにを思い出したか、自分で吹き出し「ソーリー」と謝り、またハハハハと笑った。
「現代人でも器用なやつは……。パリの大聖堂を作った石工はどうだ」
「これはね、どう研鑽しても彼らのレベルには達しないんだ」といやに自信たっぷりだ。
「どうしてだ?」
「それはね……ホモ・サピエンスには“意識”がなかったんだ」
「え、意識がない!」
「そう、“われわれのような意識”がね」
これは! 突然のなんとも破天荒で未知の海原に誘惑するような話だ。ビールを重ね良い気持ちの脳みそに衝撃がはしった。――なんと意識のない人間か、いったいどんな生き物か。これは深そうで、はまりそうだ――窓の外に目をやると、ほぼ赤道上の陽はまだ高い。集合時間まで格好の時間つぶしになるだろう。JJはさらに続ける。
「よけいな意識がないから、技を得るまで何万回でも繰り返せるし、作るときも無心の境地ね」
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