博昭はしゃがみ込んでナオキの顎をつかんだ。手のひらでナオキの頬を思いっきり張った。乾いた音が室内に響く。
「てめえ、なめてんのか」
声を押し殺して博昭は言った。
「す、すまん」
ナオキは頭を下げた。かまわずもう一発張る。ナオキの頬が真っ赤になった。
「とっとと行け」と博昭は言った。何か言いたそうに、ナオキが上目遣いで博昭を見る。
「ヒロアキ。おまえ女が─」
今度は頭突きを入れた。鈍い音がした。ううっー、と唸りながらナオキがうずくまった。
博昭はナオキの耳元に口を近づけた。そして、愛を囁くような声で言った。
「殺すぞ、てめえ」
ナオキは札束を握りしめ、逃げるようにして部屋を出ていった。
頭をまず潰す。それから矢部兄弟。福田。今のうち楽しんどけ。骸のリーダーは当然、全員モノホンの骸にしてやる。
博昭は声に出して呟いた。
次回更新は11月1日(土)、21時の予定です。
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