ナオキは一時間後にやって来た。いつものように満面の笑みで、エネルギッシュに、ドアから飛び込んでくると、まっすぐ博昭に歩み寄った。両腕で博昭を抱き締めながら、大袈裟に喜んでみせる。

「ヒロアキ。心配したぜ。もう大丈夫なのか?」

ナオキ。浜田山愚連隊のナンバー2。博昭の右腕で弟分。明るい態度とは裏腹に、性格は凶暴。巷では浜田山の闘犬と呼ばれている。博昭にしか尻尾を振らない闘犬。

「ああ」と博昭は答えたが、内心はナオキの微妙な心の揺れを感じていた。ナオキが博昭の顔をちらりと見た。博昭はナオキが抱いている不安と混乱を感じた。それは不信感を持った者特有の不安だった。

だが同時に、今、この瞬間、安心をさせてくれ、と心から願っているようだった。しかし、ナオキはそれについては何も言わなかった。その代わり、最新の芸能界の話題や、新しくできたらしいカノジョについておしゃべりをした。

博昭が見つめると、ナオキは困ったような顔をした。それからため息をつき、顔を伏せた。

次回更新は10月31日(金)、21時の予定です。

 

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