病院に着いた。

「父さん!」

「兄貴、大丈夫だ。今、落ち着いている」ふっと、ため息。母さんを見ると、震えている。

「母さん、大丈夫だよ」と抱きしめた。しばらくすると、震えが止まった。

香子が来た。

「大丈夫ですか!」と青ざめている。

「香子、大丈夫だ。母さんをお願い」

香子は母さんを抱きしめている。背中を擦っている。安心しているようだ。良かった。

「ご家族の方、担当医がお呼びです」

母さん、

「丈哉、幸也が聞いてきて」

「分かった」

幸也と二人で話を聞いた。

「軽い脳梗塞ですが、年齢的にも無理が利きません。二回目が起こる時は心配です。くれぐれも気を付けてください。一週間程度の入院ですね」と。

「幸也、父さん、無理していたのか。今日の経緯を話して」

「今日、父さんが『僕はもうすぐ八十になる。社長を副社長に譲りたい。承認してほしい』と急に話し始めたんだ。みんなびっくりしたが、心では覚悟は出来ていたと思う。満場一致で僕の社長就任が決まったんだ。

親父は『本当にありがとう。ここまでこれたのは、皆さんのおかげです。今後とも、副社長を指導してください。お願いいたします』と言った途端、倒れたんだ。騒然となったが、直ぐ秘書が救急車を手配して。処置が早くて、良かった」と泣いている。

幸也は不安で落しつぶされそうに見えた。

僕は、何が出来るか考えた。