【前回の記事を読む】父親が倒れた。急いで病院に向かい、着くと母さんが震えながら座っていた。医者に話を聞くと「軽い脳梗塞ですが…」

第四章 不運が招いた縁

「副社長、早かれ遅かれ、そうなると思っていた。君のおじ様への愛情は分かっている。後は、圭だ。あれがどれだけ君を頼りにしているか。説得に時間がいるだろうな」と。

僕も気になっている。社長が圭に電話。

「圭、今いいか? 副社長のおじ様の件は知っているな。今、今後の話をしている。来れるか?」

圭は、無言のようだ。十分後に行く、と答えたようだ。今後の話を進めていた。松田を専務にと。圭が来た。

何も言わず、僕に近づき、手を握った。

「丈おじ、いつかは来ると思っていた。でも、この手と父は僕の側に、いや、僕のものと思っていた。何かあれば、この手を握れると。常に。

だから、思いっきり、挑戦出来た。父もそうだっただろう。丈おじ、本当は、絶対放したくない。でも、幸也さんに返さなくてはいけない時が来たんだね。寂しいよ」と泣いている。

僕は嬉しくて、言葉が見つからない。

社長が、

「圭、居なくなるんじゃないよ。週二日は監査役で出勤するんだ」

圭が、顔を上げた。

「本当に! 本当に!」とキラキラと目が笑っている。分かりやすい子だ。相変わらず、可愛い奴だ。