がんの原因となる感染症としては、ヘリコバクター・ピロリ菌が胃がん、肝炎ウイルスが肝臓がん、ヒトパピローマ・ウイルス(HP)が子宮頸がん、膣がんや咽・喉頭がん、ヒトT細胞白血病ウイルスが成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)を引き起こすことなどが知られている。

職業に関連する発がん物質としては、建材や車のブレーキなどに使用されていたアスベスト(石綿)が中皮腫や肺がんの原因となり、農薬などに使用されていたヒ素が皮膚がんや肺がんの原因となる。

放射性物質の発がんに関しては甲状腺がんが知られている。チェルノブイリ原子力発電所事故で放射性ヨウ素が大量に放出され、小児甲状腺がんが急増した。

食物では、赤肉と大腸がん、飲酒と喉頭がん、食道がん、肝臓がんなどが挙げられている。ベータカロチンのサプリメントと肺がんの関連なども言われている。

がんは、一般的には遺伝するものではないが、一部のがんでは遺伝するものがあり遺伝性腫瘍や家族性腫瘍と呼ばれ、遺伝性乳がん卵巣がん症候群、大腸がんや子宮体がんでみられるリンチ症候群、家族性大腸腺腫症、遺伝性網膜芽腫症などがある。

がん患者の現状

死亡者数と罹患者数

わが国における、死因別に見た死亡率の推移(参考資料二)を見ると、昭和22年(1947)には、悪性新生物(がん)は死因の5番目で、1番は、戦前から引き続いて結核、2番は肺炎で感染症が上位を占めていた。

その後は、肺結核など感染症による死亡が急速に減少し、脳血管障害(脳卒中)、心疾患、悪性新生物(がん)などいわゆる生活習慣病による死亡が増加し、脳血管障害が一番多い時期がしばらく続いた。そして、昭和56年(1981)に悪性新生物が一番となり、それ以降、死亡原因の一位が続き、増加の一途を辿っている。

令和5年の人口動態統計月報年計(概数)の概況(参考資料二)によると、全死亡者数は157万5936人で、その内訳を見ると、1番はがん(悪性新生物)で全死亡者に占める割合は24・3%、2番は心疾患の14・7%、3番は老衰で12・1%となっている(図1)。

(図1)

すなわち、4人に1人はがんで死亡していることになる。


参考資料・文献

一 国立がん研究センター・がん情報サービス : がんの基礎知識

二 厚生労働省「令和5年人口動態統計月報年計(概数)の概況」主な死因の割合

 

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