夕方、家に着いたら直ぐ、携帯が鳴った。

「はい、山岡です」

「私、大山といいます。昨日、事故を起こした大山清の息子です。大変、ご迷惑をおかけいたしました。おケガは大丈夫でしょうか。これよりお詫びを申し上げにお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

「わざわざありがとうございます。よろしいですよ。何時頃になりますか」

「七時頃には伺えると思います。よろしくお願いいたします」

「香子、昨日の事故を起こした大山さんの息子さんが、いらっしゃるそうだ。七時頃に」

「はい、分かりました。お夕飯、済ませておきましょうね」

済ませて、片付けも済ませて待っていた。

ピンポーン。

「はい、どちら様でしょうか」

「大山と申します」

「はい、どうぞ」と施錠を外した。

「どうぞ、お上がりください」

「お邪魔いたします」と恰幅のいい男性。

「この度は、父がご迷惑をおかけいたしました。本当に申し訳ございませんでした」と頭を深々と下げている。

「いいえ、お気遣いいただきありがとうございます。ケガも、たいした事はありませんし、仕事にも支障はありませんよ。お父様のほうはいかがですか? 大丈夫ですか」

「大変恐縮です。二~三日で退院です」

「良かったですね。ホッとしました」

「山岡さん、父へのお気遣い、ありがとうございます。心配でした。僕は、山岡さんを知っています。大変な方を、ケガさせたと思いました。

お仕事に支障はないか、怖かったです。反対に父の事をご心配くださり、驚いています」

「骨折でもないですよ。ただ、ヒビが入っているだけですよ。その代わり、ギプスをしている間は、妻のお弁当が食べられるんですよ。嬉しいです。日頃は会合や会食会議で、外食ばかりです。おやつもついているんですよ。毎日、楽しみです。アハハハハ」

「山岡さん、お気遣い、本当にありがとうございます」と手土産を下さった。

「香子、大山さんにお出しして」と言うと香子はおはぎを出した。

「どうぞ、お口に合いますか」と聞くと、皿ごと持って、ジッと見ている。

次回更新は10月4日(土)、22時の予定です。

 

👉『夢を叶えた、バツイチ香子と最強の恋男』連載記事一覧はこちら

同じ作者が描く、大人の恋愛小説

夫の不倫がきっかけで離婚。しかし、それが新しい愛と幸せに出会う始まりだった。

👉2024年、GLO人気ランキングを独占した話題作

『幸せを呼ぶシンデレラおばさんと王子様』
第1回記事 ホテルの出口から見知らぬ女と一緒に出てくる夫を目撃してしまう。悔しさがこみ上げる。許せない。裏切られた。離婚しよう。

 

49歳独身、バリバリのお局様ですが…年下男子の押しに負けちゃいました!

👉年下彼氏×中年女性のキュン死必至な歳の差ラブストーリー♡

『あら、50歳独身いいかも!』
第1回記事 「二か月前からあなたを見ていました」――49歳独身女性がバーで若い男性と出会い…年下×中年の物語が始まる!