【前回の記事を読む】「まるで小学生の遠足のようだ」思わぬ事故で松葉杖生活に。しかし、妻が毎日お弁当を作ってくれるようになり…
第四章 不運が招いた縁
「奥様の手作りですか?」
「ええ、妻のおはぎは評判がいいですよ。うちの社長始め、秘書達で争奪戦ですよ」
「それでは、頂きます。うん! 小豆は京都の大納言ですか?」
もう一個、食べている。
「これは! ワサビとショウガが入っていますね。それと、少々ゆずも」と凄い。
「大山さん、凄いですね。隠し味のゆずまで、あたっています」
「美味しいです。本当に、美味しいです。ご自分で考案されたんですか?」
「ええ、夫も家族も好きですので、よく作っています」
「実に素晴らしい。職人が作るおはぎより美味しいです!」
「大山さん、何故、こんなに詳しいんですか?」
「すみません。申し遅れました。お菓子のななろう屋をやっています」
「ええー! あの有名な和菓子のななろう屋さんですか? 恥ずかしいです」
「いいえ、奥様、素晴らしいです。感動しました。初めてです。自分のおはぎより美味しいおはぎを頂いたのは!」
「やめてくださいよ。恥ずかしいです」
「お願いがあります。ワサビおはぎを提携しませんか?」
「提携、とんでもないです! どうぞ、お使いください。これでいいんでしたら」
「そんな事は出来ません! 図々しいお願いですが、ワサビおはぎを頂けませんか! 職人に味見をさせたいんです」
「ええ、三個でいいですか?」