【前回の記事を読む】信号待ちの時、後ろから凄い勢いで追突された。シートベルトのおかげで命に別状はなかったが、足が…
第四章 不運が招いた縁
吉田ホールディングス。
翌日、松葉杖で出勤すると、電話は鳴るわ、会長、社長は来るわ、いつもより忙しい日だ。
足だから仕事に支障はない。いい事は、香子のお弁当がある。おやつも。お昼時間が楽しみだ。
三週間は、外食が無い。嬉しい。香子のお弁当が食べられる。
総本部長の松田に引継ぎをする、松田を育てる良い機会だ。
「副社長、ファストケイの安岡社長より、お電話です」
「はい、山岡です。昨日は日程変更で、ご迷惑をおかけしました」
「山岡副社長、知っていますよ。私の会社に向かう途中で事故に遭われたそうで。大丈夫ですか」
「足を少しケガしただけです。仕事に支障は無く、事故のお陰でいい事があります。妻のお弁当が昼は食べれるのです。嬉しいです」
「僕に気を使われていますね。ありがとうございます。落ち着きましたら、伺います」
「いえいえ、部下を育てる機会を貰いました」と電話を切った。
ランチタイムだ。
「高木君、お茶を入れてほしい」
「はい、お持ちいたします」
「楽しみだ。何が入っているかな~」
弁当箱を開けた。
「わぁー、美味しそう。僕の好きな物ばかりだ」
「副社長、子供みたいですね。お顔が笑っていますよ」
「高木君、見よ、お弁当を。輝いているだろう」
「お味見してもいいですか?」
「ダメだよ。僕が全部、食べるんだよ」
美味しいな。香子、ありがとう。ゆっくり食べた。
「おやつは、何かな」とタッパーの中を見た。葛餅と果物が入っている。三時が楽しみだ。まるで小学生の遠足のようだ。自分で笑ってしまった。久しぶりの気持ちだ。