続いて上下関係ですが、これは野球部にもありましたので多少の免疫はついていたものの、ラグビー部のそれはもっと徹底していました。今はどうか知りませんが、世の体育会系大学ラグビーの世界で言われる「四年神様、三年貴族、二年平民、一年奴隷」みたいなものです。

一年生は本当に奴隷のような扱いで、練習後は汚くなるためお風呂に入って体を洗うのですが、当然最後です。すると、お風呂のお湯は汚れていて茶色ですし、自分の体を拭こうと用意していたタオルはいつの間にか先輩が使っていて使えないのです。

「自分の使えよ、このやろー」と呟きます、心の中で。

最後の「先輩の非常識な行動」ですが、挙げればいろいろあります。

朝、担任の先生が生徒を前に、「近隣からクレームが来ている。通学中の公園で当校の男子学生が他校の女子高生と破廉恥な行為をしている。そういう馬鹿げた行為は慎むように」と言うのです。するとラガーマンたちはピンときて、「先輩の〇〇だ。いつものことだよな」となるのです。

他にも、校内のバスケットコートで全裸になって「ふる〇〇ショットォー」とか叫びながらジャンプし、ジャンプ中に何回ふる〇〇が上下、左右に動いたか競い合うのも目撃しました。自分でカウントできないから仲間に確認してもらうのです。見ている分には面白いですが、本当にクレイジーです。

さらには、飲もうとしていたペットボトルに先輩がおしっこをこっそり混ぜてあるとか、もう滅茶苦茶、何でもありです。こんな部活だから一年足らずですっかり辞めたくなりました。しかし、当然辞められません。辞めたら先輩に何をされるかわからないし、学校に居場所がなくなるのは目に見えていました。どうやったら辞められるか必死に考えた結果が留学だったのです。

ここでも私を突き動かしたのは「逃げる」という不純な動機でした。どうすればかっこいい言いわけで周囲を納得させ、辞められるか私なりに考えた結果でした。留学先をオーストラリアにしてしまえば、両親も反対しないだろうと思ったのです。おずおずと相談すると、案の定「いいんじゃない、オーストラリアなら勝手知ってるし。何かあっても知り合いがいるから大丈夫よ。いっちゃえ、いっちゃえ」なんて気楽なものです。

一人息子の本心に気づくこともないまま簡単に認めてもらえました。高校を退学する時、クラスの皆に「僕には夢があって、留学して実現するんだあ」とか体のいいことをいう機会を与えていただきましたが、全部ウソです。今では何を言ったかも覚えていません。先生、ごめんなさい。

次回更新は10月1日(水)、8時の予定です。

 

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