あれから23年。場所こそ変われど、こんなにも長く「風楽」という店と付き合うことになるなんて、当時の私は思ってもいませんでした。
開店当日。雇われ店長だった時は、オーナーの仕事関係の方や私の友達から、たくさんの生花や花輪が贈られて、とても賑やかでした。今度の店のオープン初日はお祝いの花もなく、とても静かにスタート。2週間の突貫工事に追われ、友達に連絡する暇もなかったので、大半の人はまだ前の店で店長をやっていると思っていたようです。
オープンに向けてチラシを撒くお金もなかったので、ワープロでチラシを作り、白黒コピーをしたものを自分でポスティングしました(地味すぎるチラシを読んでもらえたかどうか……)。
大人のエスニック衣料を販売している店がまだ珍しかったこともあって、開店と同時に次々にお客様がいらっしゃいました。内装工事の時から古い建具を入り口に入れたり、土壁を塗ったりしていたので、なんの店だろう?とご近所で評判になっていたようです。酒々井は小さい町だったので、そういう口コミが、いい意味で主婦層に広がっていきました。
釣り札のないレジに次々と紙幣が積み上げられていきました。夕方、店を閉めた時、レジに入っている札束(久々に見た?)を数えながら、日銭が稼げるってなんてありがたいんだろうと泣きそうになりました。予期せず無職になってしまった私に、ようやく仕事場ができたのです。
無職でないシングルマザーとして、子どもたちとお正月が迎えられる……と一安心。いつか自分の拠点を作りたかったけれど、まさかこんな形でスタートするなんて……。あの日から今日まで、そしてこれからも、私はいつも風楽と一緒に生きています。
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