【前回の記事を読む】帰宅後すぐ風呂に入って、また直ぐスナックに出かける新婚生活。子どもは可愛いかったが、家にはアイツがいたから…

弓子と江美

その後、弓子が自分の店をオープンする事になると、江美は「ウチの客を取る気か」などと言っていたようだ。江美は姪っ子と一緒に弓子の店に怒鳴り込んできた事もあるそうだ。

この話は弓子の店を手伝いに来ていた勝也の従妹が言っていた。そして、従妹は「あの人、凄い怖い人やな」と言っていた。

今思い返せば、江美はいつもこうやって人を利用して、必要なくなると色んな手段で辞めたくなるように仕向けている。喫茶店の時もそうだった。弓子の他にもう一人おばちゃんが居たが、悪口や陰口を言われて辞めていった。

そして、江美のスナックは、県外から呼び寄せた姪っ子(美人姉妹)と、その友達の3人の若い美人が居るという事から、かなりの人気店になっていた。

最初は姪っ子達をかなり可愛がっていたが、姪っ子達にも自分の客が付き人気が出てくると次第に扱い難くなってきたのだろう。江美は姪っ子達の愚痴をこぼすようになっていた。

その後、次は紗香の友達を店で働かせるようになった。紗香の友達は頻繁に遊びに来ていたので江美とも仲良しだった。江美は仕事に誘うというより、自ら働きたくなるように仕向けていった。

「この仕事は華やかで楽しい、稼げる」などと、暗示のようにすり込んでいく。人の心まで操作する能力者のようだった。人を使う事や商売などの才能は尊敬に値する。

結局、姪っ子はお客さんと良い関係になり長女は結婚し、次女と友達も働きにくくなったのか、辞めている。紗香の友達は天性なのか、接客上手で若くて明るい性格だったので、当然人気者になり持てはやされる。

しかし、若さゆえに常連客が増え、客と良い仲になると、やはり扱い難くなり居場所をなくされていった。

現在その紗香の友達はスナックの経営者で成功している。数人の女性を雇い、自分の娘にもお店の手伝いをさせ繁盛店になっている。勝也は江美を見ているようだった。

話は戻り、姪っ子の件だが、一人は泥棒扱いをされていた。真実は分からないが、江美の自宅に空巣が入った事があり、その犯人と疑われたのだ。少し前から遠回しに姪っ子の悪口を聞いていたので、勝也も姪っ子を疑ってしまっていたが、今となればそれが江美の手口だったのかと思っている。

弓子は「江美ちゃんには本当に世話になった。ホンマにええ人や」と、いつも言っていたが、最後には「敵に回すと恐ろしい人や」とも言っていた。

勝也達に子供ができ、一緒になる事が決まると、江美は、3姉妹の長女だからと勝也を養子に欲しいと言ってきた事もあったようだ。

勝也は弓子にその話を聞いて、母より強い女性が居る事にびっくりしていた。

紗香の友達が店を辞める前には江美にも良い人ができていた。大きな会社の社長さんだった。この頃から、色の黒いおじさんは来る事がなくなっていた。