気づくと私は、母親にされて嫌だったことや辛かったことは絶対せず、逆に私が幼少期にされたかったことを心がけながら息子と過ごした。泣けばいつでも駆けつけ、たくさん遊び、寝る前には子守唄を歌ったり絵本を読んだり、たくさん抱きしめ「ママとパパの宝物だよ」と毎日一緒に眠りについた。
母親を反面教師にすることで、息子の育児を必死にやってきた。
子どもは容赦なく、いつだって全力で喜怒哀楽をぶつけてくる。
そんな息子の姿を見ていると、いつも我慢し、素直に泣いたり怒ったりできなかった自身の幼少期を思い出した。
これが本来の普通の親子関係なのだと知り、イヤイヤ期に入ると、息子は思い通りにならないたびに泣き喚くけれど、好きなだけ泣かせ、落ち着くまでそっと見守り、その後に、どうしてやりたいことができないのか、してあげられなかったのかを、その都度息子に分かりやすいように説明し、「でもやりたかったよね」と寄り添い続けた。
あなたはあなたでいいんだよ。
私に遠慮なんかせず、泣いても怒ってもいいんだよと息子と向き合い、私なりに精一杯の愛情を注いだ。
そして、親というのは頭でなるものではないのだと知った。
想像の世界でしかなかったけれど、子どもの愛し方、叱り方。
その人それぞれのやり方があり、子どもの性格によっても変わってくる。だから子育てすべてにおいて《これが正解》というものはないのかもしれない。
私が良かれと思ってしたことでも息子にとっては嫌ということもきっとあって、息子は私ではない以上、息子に合う方法を常に試行錯誤しながらの育児だ。
次回更新は10月3日(金)、20時の予定です。
👉『あなただけが消えた世界[人気連載ピックアップ]』連載記事一覧はこちら
【イチオシ記事】折角着た服はゆっくり脱がされ、力無く床に落ち互いの瞳に溺れた――私たちは溶ける様にベッドに沈んだ
【注目記事】「ええやん、妊娠せえへんから」…初めての経験は、生理中に終わった。――彼は茶道部室に私を連れ込み、中から鍵を閉め…