【前回の記事を読む】人生初の海外旅行はアメリカへ! 20歳の夏、「少しの心配も不安もなく、ただただ嬉しさで胸がはち切れそうだった」

初めての海外旅行 1971年のアメリカ

【カリフォルニア】

翌日は日本からの友人と2人でバスに乗って、湾の向こうのサンフランシスコを訪ねることになった。朝食の後、勢い込んで教えられたバスに乗る。料金の支払い方法が分からず、ぐずぐずしていると、運転手が何やら言ってきた。

しかし、何を言っているのかよく分からない。「アイ ベッグ ユア パードン?」と言ってもう一度繰り返してもらうのだが、また、何を言っているのかが聞き取れない。

それまで東京の学校でアメリカ人とも多く英語を話してきた自分なので、これはショックであった。乗客の前で珍妙なやり取りを披露してしまって、みっともないったらありゃしない。英語は結構分かると自負していたので、いきなりプライドも傷ついた。これは着いて早々先が思いやられる。

サンフランシスコではお定まりの観光コース。ケーブルカーで金門橋、チャイナタウン、フィッシャーマンズウォーフなどを回った。「アイ レフト マイ ハート イン サンフランシスコ〜♪」と唄われるこの街は、やはり聞きしに勝る美しい坂の町である。

そして三日目、いよいよ友人達と別れて一人旅の始まりだ。日本で買っておいた米国内なら約二ヶ月間はどこでも何度でも使えるグレイハウンドのバスの周遊切符を頼りにサンフランシスコの長距離バスターミナルへと向かう。

シルバーボディーにしなやかなハウンド犬のマークを掲げた大型のバスが出たり入ったり、圧倒されそうな規模の建物である。なんとか見つけた自分のバスに乗ってみると、中は大きな荷物を持った旅客でごった返している。

初日のバスでのこともあり、言葉の点でやや心許なさを感じつつ切符売り場へと向かう。目的地はここから3千キロ先のミシシッピー州はナッチェツという街。

深南部と言われ、昔からアメリカの中でも超保守的な地域にある街だ。なぜこの街を訪ねることになったのかの経緯はこうである。