この状況を皆さんはどのように判断しますか? 私は売り時あるいは資産組み換えのチャンスだととらえます。
売り時の理由は、高値相場が形成されているからです。高く売れるのであれば、すぐ売却したほうが良い。地方であれば、なおさら早く売却したほうが良いと考えます。
不動産価格が下がり続けていても「バブル期のように上昇するのを待てばいいのでは」とおっしゃるお客様もいますが、私はそうは見ません。
14ページの人口統計データをご覧ください。平成27(2015)年から日本の人口が減少し始めていることがわかります。
この傾向は世界的に見ても急速だと言われています。人口が減ると不動産の需要が減少します。需要の減少はまず地方の過疎地域から始まると予想され、結果として地方の不動産価値が下がる可能性が高くなります。
もちろん人口動態以外にも、世界情勢など不動産価値に影響を与える要因はあります。これらを考慮すると、地方の不動産は早めに売却して利益を確定させるほうが良いというのが私の考えです。
ここで不動産売却に関する重要な教訓を含む事例を紹介します。この例は、単に売却を急ぐだけでは望ましい結果が得られないことを示しています。
事例1 相続で取得した不動産を売却して損をしたAさん
Aさんは、千葉県にて代々農家を営む家系の長男として生まれました。一人っ子で、何不自由なく育てられ、父親に習って農業を引き継ぐ予定でした。
しかし、平成に入り、農業で生計を立てるのが厳しくなるなか、お父さんが突然亡くなってしまったのです。
幸い、相続人は母親と長男であるAさんだけ。Aさんの妻は養子も縁組しておらず、揉める要素はありません。
しかし、それなりの規模の不動産があるため、5000万円を超える相続税の支払いが必要でした。お父さんは、不動産は多く残してくれたものの、現金は農業による経営の厳しさもあり、1000万円しか残っていませんでした。
Aさんの手元資金を考慮しても、相続税の納税には3000万円足りません。困ったAさんは、古くからお付き合いのあった金融機関から紹介してもらった不動産会社に、不動産売却の相談をしました。