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翌日、面会時間の十五時にサトルは病院に着いた。受付を済ませて、サトルは琴音の部屋へ急いだ。
「来てくれてありがとう」
琴音は昨日より顔色が良くなったようだ。
「気分はどう?」
「睡眠薬を飲んだから、よく眠れた。午前中はずっと検査でドタバタしてた。でも気分は悪くないわ」
「それは良かった」
サトルは琴音の頬を両手で包んだ。
看護師が入ってきて、
「先生がお呼びです」と伝えた。
「ちょっと行ってくる。また戻ってくるから待っててね」サトルは琴音に笑顔を見せ、病室を出た。
「脳検査の結果、問題はありませんでした」
「そうですか。良かった」
「もうひとつ良かったことがありますよ。お腹の赤ちゃんは無事でした」
「えっ、赤ちゃん?」
サトルがびっくりして聞いた。
「えっ、知らなかったんですか? 妊娠三か月ですよ」今度は担当医が驚いた声で言った。
「初めて聞きました。後で妻に聞いてみます。病室に戻っていいですか?」
「ひとつだけ伝えなければいけないことがあります。あなたのご両親の件ですが、奥様にはすでに伝えてあります」
担当医がうつむき加減で言った。
「赤ちゃんのことを知っていたら言わなかったのですが、奥様はしっかりした方のようでしたし、ご両親が亡くなったのかどうしても教えてほしいと強く言われましてね」
「わかりました。その件も妻と話してみます」サトルは診療室を出た。