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山口蒼洋は東精大学医学部の研究室で待っていた。

「いてくれて良かったよ」

サトルは山口に礼を言った。

「いや、僕の管轄の相談なんて言ってたから、人でも殺して死体が残っちゃったから処分先として受け取れとでも言われるのかなと思ってね」山口が笑顔で言った。

「つまらない冗談はよしてくれ。オレは真剣に悩んでいるんだ」「確かに顔色が悪いね。じゃあ、早速相談ってやつを聞こうか」笑顔だった山口の顔が真剣になった。

サトルは古い寺で自分の墓を見つけたいきさつを語った。

「いったいどう説明がつくんだ? オレは今こうして生きているのに、なぜ小さい頃のオレの骨が行ったこともない寺に埋まっているんだ? それもオレが記憶を失っていた時期ともピッタリ一致する」

サトルは小さい頃の記憶がなく、両親もなぜかその理由を話してくれないこと、写真すら一枚も残っていないことも話した。

「骨壺の中にはどれくらいの骨が入っていたんだ?」

「それほど入っていなかったな。底のほうに三、四センチくらいだね」

「幼児の骨だったらそれくらいかな。まあ、身長にもよるけどね」

「じゃあ、オレの幼児のときの骨だというのか?」

「いや、今ここに君がいるのだから、この骨が君のものであるはずがない」

「じゃあ、誰の骨なんだよ」

「さあ、そんなことわかるわけないじゃないか。DNA鑑定でもしてみれば、君の骨でないことはわかるよ」