あまり関わりのない人たちと1から関係性を構築するために、精神をすり減らしてしまった。理子は自分の中から半ば魂が抜けていきそうだなと感じながら笑顔を顔に貼り付けた。
この疲労感には覚えがある。学生時代に新しいクラスで誰かに話しかける時、大学のサークルに入る時、新しい部署に入った時……。
「じゃ、また飲もうぜー」
「おう」
「お疲れ~」
「お疲れ~!」
みんなを改札で見送る……が、隣には秋斗がまだいる。
「……帰らないの?」
「帰るけど」
そう言ってすたすたと改札とは逆の方に歩き始める。
「えっ、豊橋君、電車じゃないの!?」
「違う」
「会社まで歩きで通ってるの?」
「そう」
秋斗の隣まで追いつくと、並んで歩く。
「こっちの方面?」
「うん」
(そっか……早く1人になりたかったけど……)
どうせすぐ近くで別れることになる。家まで10分少々だし、最後にもうひと踏ん張り、と思う。
「意外とみんなと話せてよかったね。結構久々だったから、話盛り上がらなかったらどうしようかと思った」
「あのさ……別に俺、あんたと喋りたいわけじゃないよ」
その言葉が、鋭く理子の鼓膜に突き刺さる。
次回更新は9月11日(木)、11時の予定です。
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