彼女とこれからもずっと一緒にいたい。死んでほしくないというのが裕翔の願いだった。裕翔のお願いを聞いて、彼女は黙り込んだ後、涙を流した。

「……ありがとう」

彼女はそう言って、さらに泣き出した。裕翔は思わず彼女をギュッと抱きしめて、やさしく頭を撫でた。

彼女は嬉しそうに泣きながら笑っていた。

次の日、学校へ行くと、彼女は来ていなかった。

彼女はたまに遅れて登校したり早退することもあったので、また遅れてくるのだろうと思っていたところ、担任の先生が音声アプリで報告した。

『昨夜、北山桜空さんが亡くなりました』

「え?」

裕翔は反射的に立ち上がり、教室中が静かにザワザワしていた。

意味が分からなかった。頭が混乱して理解が追いつかない。

これは何かの間違いだ。きっと先生が音声アプリで入力ミスしたんだろう。そう思いたかったが、先生は間違えた様子を見せていない。

昨日まであんなに元気だったのに、急に死ぬはずがない。そう思った時、裕翔の脳内で彼女が最後に発した言葉「ありがとう」という声が聞こえた。

——声だ。

彼女は今までずっと声を出していた。声の上限を迎えて死んでしまったんだ。

その考えにたどり着いた時、裕翔にどうしようもない後悔が訪れた。

もっと早く、彼女に声を出さないようにお願いしていれば、彼女はまだ死なずに済んだかもしれなかったのに。

裕翔は自分を責め、静かに泣きじゃくった。

次回更新は9月5日(金)、11時の予定です。

 

👉『ボイス・リミット』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】妻の親友の執拗な誘いを断れず、ずるずる肉体関係に。「浮気相手と後腐れなく別れたい」と、電話をかけた先は…

【注目記事】何故、妹の夫に体を許してしまったのだろう。ただ、妹の夫であるというだけで、あの人が手放しで褒めた人というだけで…