「何なんですか? 親しげに。何か話があるんですよね。聞きますから早く言って下さい。変に気安くされると気持ち悪いですから」

突っぱねるかのような勢いで言っているのに。やたら落ち着いた感じでこちらを見ながら近づいてくる。

「うふふふ。なかなか短気だねぇ松本さん」

「余計なお世話! 早く言いなよ」

すると真顔になり、何を話すかと思えば、

「実はさっき、うちの女子たちから聞いたんだが、通路を通りかかったら宝探しの話をしていたと。それはもしかしたら学園に秘されているという九鬼家にまつわる話なのではないのか。もしそうなら、参加させてもらいたい。是非に!」

「えぇっ。どうしてそんなこと知っているの。いやそれよりも参加したいなんて。そんなこと急に言われても私の一存では答えられないよ。でもでも何で? 学園に伝わる九鬼家の宝探しだと気が付いたの。大体あんた学園違うんだし。自分の学校にはなくてうちにあるから、悔しくて参加したいとか」

「はっきり物を言う人だなぁー。違うよ! そもそも九鬼家とは少なからず縁があるから調べてみたいと思うんだ。私の祖母は富貴家から嫁いで来たんだ。そして幼い頃から昔語りで九鬼家の話を聞かされていたという訳だ」

「あぁーーそういうことね。みんな嫌がると思うけど。一応話してみるよ」

私は直ぐ側まで話しながら迫ってくるあいつに気圧(けお)されて、ついそう言っていた。

あいつは私の側に立つと、遠くを見るように話し出した。

「富貴家の出自は三重県で。元々志摩国を本拠にしていた九鬼水軍の下にいたんだ。

九鬼家が江戸時代、跡目争いで兵庫と京都に転封になる時、海のない領地での暮らしを憂い、逡巡する家臣を思い、名乗り出る者には、出奔構なしと計らわれることになる。この時、代々水軍として暮らしてきた富貴家は、禄を返上、代わりに幾ばくではあるが金銭を頂く。

一家といっても父母は既に身罷(みまか)っており、妻と子を連れ尾張に行きどこに仕官することもなく、身に付けた水軍の心得で海運業に携わることになったんだ。それ以後は何事も上手くいき財を成していくのだが、恩恵を受けた九鬼家のことは、何時如何なる時も敬ってきたみたいだ」