唐突な動物園へのお誘いだった。明日は土曜日だから学校は休みで、特に何も予定はなかったので承諾した。

『いいよ』

「じゃあ十三時に駅集合ね!」

とんとん拍子で明日の予定が決まってしまった。

今まで屋上でしか会話したことがなかったので、休みの日に学校以外の場所で会うのは初めてだ。

妙に緊張してしまい、その日の夜は一睡もできなかった。

 

駅に着いて待っていると、後から来た彼女が裕翔を見つけて笑顔で手を振ってくれた。

白色のワンピースに麦わら帽子をかぶっていた。

「ごめん! お待たせ〜」

初めて見る私服姿は、制服姿とは違う新鮮さがあって可愛かった。

「ここの動物園よく来るんだよねー。私年パス持ってるから」

裕翔は動物園に行くのは初めてだったので、どう回るかはすべて彼女に任せることにした。

動物園には、ジャイアントパンダ、アジアゾウ、ホッキョクグマ、ゴリラ、キツネザルなど、いろんな動物がいて面白かった。

「パンダって可愛いよね〜」

ジャイアントパンダの親子を見ているとき、麦わら帽子を左手で押さえながら彼女は言った。

『可愛いね』

小さい子どものパンダは白い部分が薄くピンク色になっていた。

「パンダの赤ちゃんって、身体を綺麗にするために母親から舐められて、ああやってピンク色になるらしいよ」

パンダの赤ちゃんが薄くピンク色になるのは、母親からの愛情によるものらしい。

彼女は羨ましそうな顔でパンダの親子を見つめていた。

ひと通り園内を見て回った後、帰る前にグッズコーナーに立ち寄った。この動物園にいる動物の写真や人気の動物がキャラクターになったグッズが売られていた。出口の近くでグッズを販売するのは、最後に買わせて帰らせる作戦だなと動物園の経営戦略に感心した。

「このパンダめっちゃ可愛い〜!」

彼女はパンダの小さなぬいぐるみのキーホルダーを見つけて手にとった。

「岡本くんも何か買う? そうだ、せっかくだし同じの買おうよ!」

こうして同じパンダのぬいぐるみキーホルダーを二つ買うことになった。