(あ、やば。もうこんな時間……)
今日は同期との飲み会がある。ただ新卒から時がたってもこの会社に残っている、というだけしか共通点がないメンバーだ。他の人達の交流は知らないが、少なくとも理子にとってはそれだけしか繋がりはない。
(何を話そうかな? みんな結構やってること違いそうだから、仕事の話も合うかどうか……)
考えながら帰り支度をすすめる。
「岡野、もう帰るの?」
「はい、今日はちょっと用事があるので」
同じ部署の先輩が、声をかけてくる。
「お前が仕事より優先する用事って珍しいな~」
「もしかしてデートか?」
副編集長もそう言いながらにやにやと笑っている。
「違いますよ。今日は同期と飲むんです。私にデートなんて予定入りっこないですから」
「お前本当に男っ気ないもんな~!? ちょっとはスカートはいてきたりすりゃあいいのに」
「そういうの、私の担当じゃないんで。じゃあ、お先に失礼します」
先輩たちに軽く会釈をしてオフィスを出た。
(ここから歩いて10分くらいって言ってたけど……間に合うかな?)
「あ、お疲れさまです~」
「お疲れさまです」
廊下ですれ違う人々にも笑顔で挨拶をしつつ、小走りでエレベーターへと飛び乗った。
(なんだ、もしかして結構みんな遅刻してる?)
お店の地図を見ようとLINEグループを開くと、いくつか遅刻するという旨のメッセージが届いていた。
(結局、何人いるんだろう……?)
そう思いながら店員に案内された個室に入ると、まだ1人しかいなかった。
次回更新は8月28日(木)、11時の予定です。
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