「適材適所に人を配置することが絶対的に必要だと思ったんです。だからコーチを選ぶことにしても、僕もコーチの経験があるし、できないわけじゃない。
だけど僕がコーチとしてやるよりも(サーブルはリー)ウッチェがやったほうがいいだろう、オレグも1人ですべてを見るのではなくサブの日本人コーチが必要だ、女子はフランク(ボアダン)がいい、とか。選手が勝つための環境づくりを一番に考えて、そこから話し合う。そうやって丁寧に進めていけば、本当に何を欲しているのかが見えてくるんです。
雄貴の頃は、何もない状態からスタートしましたが、彼らが築いた実績のおかげで、どんどん環境も整い、あることが当たり前になってきた。そうなると、気づかぬうちに選手も甘えが出てくる。あれが欲しい、ああしてくれ、と言うのはわかるけれど、当然そのすべてには応えられません。
だからそういう時は僕が選手たちと直接話すんです。『言いたいことはわかるよ。でも、そこまで求めるならここまでの成績を出してからじゃないと厳しいから、ここまではやってほしい』とちゃんと伝える。選手も与えられるのが当然だと思っちゃいけないし、そうなったら成長しない。
だからNTCで合宿をしている時に、食券を落としても知らんふりしている選手に対して、『国の代表としてここにいるお前の食券1枚、どこからお金が出ていて、その理由がわかっているのか』と激怒したこともありましたから」
選手のためであることは揺るがない。だから叱る時は徹底して怒り、でもフォローする。その塩梅が“兄貴”たるゆえんでもある。