はじめに
私は獣医師であり、「ペットアロマホームケア®」の指導者を育てる仕事をしています。
私が代表をつとめるPHAJ(日本ペットアロマホームケア協会)では、エッセンシャルオイル(精油)を使いながら、ペットと楽しく健やかに暮らすことを目的とした活動をしています。
私も西洋医学の獣医師ですから、もしペットが病気になって、薬ですぐに楽に治せるなら、そのほうがいいと思っています。
でもペットも人間と同じように、病気や不調を治してよりよく暮らすためには、薬だけではうまくいかないことも多くあります。
そんなとき、ペットアロマは役に立ちます。この本では、「皮膚炎ならこのエッセンシャルオイル」「胃腸炎ならこのエッセンシャルオイル」という単純なレシピではなく、深く原因を掘り下げながら、ペット(主に犬と猫)と飼い主がお互いに健康であるためのペットアロマの使い方をていねいにお伝えしたいと思います。
獣医師である私が、なぜペットアロマによるケアに取り組むことになったのか、「ペットアロマホームケア」の私の基本でもあるので、少し詳しく書かせていただきます。
私は14年間牛の獣医師をしていました。牛の獣医師とペットの獣医師の違いは、薬が使い放題ではないことです。
牛も風邪をひいたり下痢をしたりといろいろな病気にかかりますから治療が必要です。そのときに薬を使いますが、あまり使いすぎたくない。
なぜなら、その後、牛は人間の食べ物になるからです。家畜を診る獣医師には薬の使い方や量を守る決まりがたくさんあります。
もし、その決まりを守らずに薬を使用し、いざ、その動物が食べ物になったとき、残留薬物の検査で引っかかったら、「使った獣医師は誰だ?」となったりもします。
さらにはお薬をたくさん使うことはその農場にとって経済的にマイナスです。このコストをいかに削減するかも考えなければなりません。言い方は悪いですが、ペットは誰も食べませんから、飼い主さえ納得すれば薬漬けにしてもかまわないわけです。