いつしか森を過ぎていた

森を抜け微かな明かりが見えた

眠りから覚めてさほど長く

道を進んだわけでもなく

それでも光明が暗黒の世界に見えた

まだその光の場所まで距離はあったが、

その場所にいるのが

名誉ある人々であることがわかった

「先生、あなたは学芸の誉れ、ホメロスのごとく、

このような栄えを受け、照らされてらっしゃるが、

この、光の住人は誰なのですか?」

先生曰く、「この人たちの名声は、

現世でも鳴り響いているがここでも、

天上の恵みを得て、特別扱いされておる」

すると声が聞こえた、

「出ていった爺が戻ってきたぞ、

偉大な老詩人だ、皆敬意を示せ」

その声が止み、辺りが静まった頃、

四人の大きな影が近づいてきた

表情は全く読めない


※1 吟遊詩人ホメロス作とされる英雄叙事詩。ウェルギリウスの「アエネーイス」の下地となっている。

※2 古代ギリシアの吟遊詩人。他代表作に「イーリアス」がある。

※3 神が創造した最初の人間、男性。

※4 アダムとイヴの次男。カインの弟。カインはアベルを殺害する。人類最初の殺人といわれる。

※5 大洪水の中、ノアだけは箱舟で助かる。

※6 旧約聖書「出エジプト記」などに記される、古代イスラエルの指導者

※7 信仰の父。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教を信仰する「啓典の民」の始祖。

※8 イスラエルの王。「詩篇」の作者。

※9 「創世記」に登場する女性。ヤコブの妻。

 

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