悲しみはあっても拷問や呵責はなかった、

群れをなす人の数は多く、

子供も女も男もいる、

詩人は私に言った、「お前はこの連中が、いかなる魂か聞きたくはないのか?

先に行くまでに一つ お前に教えてやろう

彼らは実は、罪を犯したのではない、もしかしたら徳のある人かもしれぬ

だがそれでは足りぬのだ、洗礼を受けてないからだ、

洗礼はお前が考えている以上に大切なんだよ

キリスト教発現以前の人として、

崇めるべき神を崇めていなかったのだが、

実はわしもその一人だ

こうした些細な落ち度の為に、他に罪はないのだが、わしたちは破滅した、

ただこれだけのせいで大問題になり、

〈天に上がる〉見込みなしだが、願いは持っている」

それを聞いて私は心が痛んだ、というのも、

非常に優秀な人々が何人もこのリンボの中で、

彷徨っているのを知ったからだ

「先生、俺に教えてください」

と、私は頼んだ、あらゆる迷いに打ち勝つという、

“存在”について確信を得たいからだ

「その人自身の価値なり、他人のお陰なり、ここから外に出られて、

祝福される身になった人は、いないのですか?」

すると彼は、私の言下を理解して答えた、

「私がここへ来て間もなく、勝利の印を頭につけた

力ある方“救世主”が一人でここへ来るのを見た

その方はアダム※3やアベル※4

ノア※5やモーゼ※6

アブラハム※7やダビデ※8

イスラエルとその父や子、

そしてイスラエルが忠実に仕えたラケル※9

その他大勢の魂をここから

連れ出して、祝福を与えた、

お前に知ってもらいたいことは、それ以前には、

人間の魂で救われた者はいないということじゃ」

彼が話している間も、私たちはずっと歩き続けた