年齢を重ねる毎にクーカはグイグイと音を立てながらみるみる成長した。ジャンルを問わない知識と教養を身につけた人間力は強さと優しさを兼ね備えていたが、それもどこまでもチッケを守るためだった。

起業してからの社会的地位がクーカのカリスマ性に拍車をかけるのだが、それでもそれはチッケを守るための術でしかなかった。「愛とは愛する人を守ること」。クーカはそう考えていた。

クーカにはチッケが、チッケにはクーカが言葉にできないほど必要だった。二人が別れ別れになるなんて地球が爆発しても有り得ないとチッケは思っていた。時々クーカは病魔を指して「俺の腹の中にエイリアンがいる」そう言ってチッケの小さな笑いを誘っていた。

死ぬか生きるかのこんな時にも、クーカのチッケに対する思いやりは消えなかった。チッケは仕方なく口角を上げて微笑む振りをした。

そんな二人に病魔の攻撃が突然凄みを増して、ついに恐ろしい事態を迎えることになった。

耐え難い痛みに必死に耐え続け顔を歪ませているクーカの力無い手を祈るように握るチッケは「ウソ!」と、自分の心臓の動悸がバクバクと始まった理由に驚くしかなかった。

クーカがチッケの手をまるで渾身の力を込めるように握り返してきたのだ。クーカのこれまでの全てがチッケの心の中に入ってきたような、経験したことのない熱い感覚だった。

「凄いクーカ。手が熱い! このまま、このまま握り続けて!」

しかしやがてクーカの手の力は静かに抜けていった。

「ダメー。まだダメー。クーカー!」

チッケの叫びはしゃがれ声となり、クーカに届かなかった。

チッケはクーカを追い求めいつまでも呼び続けた。

「ねえ、ねえ、ねえ、ねえ、クーカ、ねえってば。聞こえる? 聞こえてる?」

 

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