Ⅰの区分を適用する場合は,部材に最も大きなプレストレスを導入することになり,荷重に対する部材の強度面での安全性は有利になる.

しかし,部材に持続的にプレストレスを作用させると時間の経過とともに変形が増大するクリープ現象の影響が大きくなる.

Ⅲの区分を適用する場合は,部材に最も小さいプレストレスを導入することになり,PC鋼材の使用量を節約できるため,経済性は有利になる.

しかし,部材にひび割れが生じるため,水分の浸透などによる鉄筋,またはPC鋼材の腐食防止対策を講じる必要があり,構造物の耐久性確保が重要となる.

Ⅱの区分を適用する場合は,Ⅰ,Ⅲのちょうど中間に相当する条件になるが,部材に生じる引張応力度とひび割れの関係について,十分な精査が必要になる.

プレストレストコンクリート構造物の設計では,要求される耐久性,安全性,使用性,復旧性を勘案し,最適な条件を設定し,総合的な評価によりプレストレスの使用量を定めていく必要がある.

最近では,表-1.1.1の考え方により,適切なプレストレスが求められている.

1 . 2.構造上の特徴

(1) プレストレストコンクリート構造物

プレストレストコンクリート構造物は,PC鋼材を用いて,プレストレスが導入された鉄筋コンクリート構造物である.

PC鋼材に緊張力を導入する作業を一般に緊張作業,またはプレストレッシングと称している.

この緊張作業は,設計で得られた緊張力を対象構造物に確実に導入し,所要性能が発揮されるために非常に重要となる.

そこで,緊張作業を確実に行うための技術的な管理(緊張管理)が必要となる.