遥かなる五輪
前回の東京五輪は、私はまだ小学校の低学年だった。白黒テレビが普及し始めた頃で、マラソンのアベベ選手が裸足で優勝したのを覚えている。
あれから56年。来年に迫った2度目の東京五輪は、人生最初で最後の観戦チャンスかも知れない。そう思い、多少費用が嵩(かさ)もうが、開会式の入場券を手に入れようと決心した。
しかし、私の前に立ちはだかったのが、インターネット申し込みである。

テレビや新聞で連日報道しているように、まず、ID登録が必要で、それが完了してからでないと、チケット購入申し込みができないらしい。それも、そこから抽選ということもあって、幾つものハードルを越える必要がある。
我々の世代が物心ついた頃は、伝達手段といえば、電報か手紙しかなかった。電話のある家はまだ限られていて、「○○さん電話ですよ」って、呼びに来てくれたものだ。
そんなアナログ人間にも、職業人としての晩節には、ワープロが導入された。その時の拒絶反応は半端じゃなかった。
ところが、苦心惨憺してワープロを覚えた頃に、今度はパソコンが登場した。IDやらアカウントやらパスワードやら、初めて聞く言葉が飛び交う。大文字小文字、半角英数字、一文字打ち間違えただけで容赦なく跳ね返され、「最初に戻る」である。まるで双六か人生ゲームだ。
前回の東京五輪は、経済力が壁だったが、今回はインターネットが私の前に立ちはだかっている。
年寄りに優しくない社会である。