夢のデパ地下

私はデパ地下が大好きだ。時代の豊かさを知る最も適した場所だと思っている。

生鮮食料品から、スウィーツ、お惣菜に、贈答品まで、ありとあらゆる高級食品が宝石箱をひっくり返したかのように並んでいる。

見て歩くだけでも充分楽しめるのだが、時々ありつける試食も楽しみの一つである。その美味しいことと言ったら半端ない。流石デパート、近隣のスーパーマーケットが扱う食材とはレベルが違う。

しかし残念ながら、毎晩ここで購入したもので夕食を調えられる身分ではない。

ここで買い物をする時と言えば、お中元やお歳暮、お供え物を調達する時くらいのものである。今回も、妻の実家に帰るにあたり、お供え物を買ってきてくれと頼まれた。

あれこれと品定めをしていると、佃煮を売っているお店の前で、可愛らしい店員さんに試食を勧められた。

爪楊枝に刺された牛蒡のおかかまぶしの美味しいこと! その後も昆布の佃煮、あさりの佃煮と、次々と味見をさせてくれた。

「旨いなぁ〜、旨いなぁ〜。どれも最高やな! ついでにお酒は出てけえへんの?」とからかうと、初心な店員さんは顔を赤らめて「残念ながら、そのサービスは致しておりません」と真面目に返してきた。

私は迷わずこの商品を贈答品に決めた。送られた人の喜ぶ顔が浮かんでくる。

「自分のためには、よう買わんけど、誰か僕に送ってくれへんかなぁ〜?」と言うと、店員さんは笑いながら、もう一つ試食品を出してくれた。