水爆のうさぎ

僕は大人になって剛田と一緒に兵隊になった。兵隊になってからも僕は剛田にいじめられていた。それからしばらくして悪魔の大群が光山に攻めてきた。その悪魔を倒す兵隊に、僕と剛田が選ばれたのだ。僕は戦争が嫌いだし、初めての大きな仕事に緊張してしまった。山に入ってさっそく悪魔を見つけた。その悪魔の能力は紙だった。あまり強くなかったが、緊張していたので倒した後に燃やすのを忘れてしまって、復活したからびっくりして混乱してしまった。そこに剛田がとびこんで来て悪魔を燃やしてくれて、僕に冷静になるよう言った。そして

「絶対に一緒に生きて帰るぞ!」

と言った。僕はいつも意地悪な剛田がとても頼もしかったので、変な気持ちになった。そして彼は、こうも言った。

「実はなあ、うらなりに兵隊になってほしくなかった理由は、危険な目に遭ってほしくなかったからなんだよ」

光山の悪魔は全員倒し、味方の犠牲も少なくて済んだ。そして、何体か悪魔を捕虜にし、その悪魔から大変なことを聞き出した。

悪魔の王の名前は、月にちなんでムーと言う。ムー王の能力は空気で、弱点は冷やされることである。冷やされて氷になったら死ぬのだ。ムー王は毒ガスを出すことができる。今その毒ガスをためていて、一年後に地球へ降りてきて、毒ガスをばらまくという。ちょうど一年で、この地球全体を覆う毒ガスを作り出せるのだという。ちなみに、ムー王は戦わない。側近のサンが戦う。サンの能力は火で、弱点は水である。そのことを聞いて兵隊の精鋭が月へ攻めるために選ばれた。剛田も選ばれた。あまり強くない僕も選ばれたが、その理由は後で説明する。

さっそく月に行き、戦争が始まった。僕は剛田が心配になり、どさくさに紛れて様子を見に行った。彼はほかの何人かと一緒に、ムー王の前でサンと戦っていた。五分ほど戦っていたのだが、剛田たちに異変が起きた。いつもより早く疲れ始めたのだ。どうやらムー王の能力で、サンの周りの空気は酸素を濃くし、剛田たちの周りの空気中の酸素を薄くしているらしい。そもそも月の空気はムー王が出しているらしい。

ついに仲間の一人が倒れて、そこをサンは狙ってきた。剛田はそのとき、彼をかばって致命傷を受け、死んでしまった。そして剛田がかばった兵隊も合わせて、結局全員命を落としてしまった。最後まで勇敢で戦友に優しかった剛田だったが、どうしても僕は、彼のことを好きになれなかった。いざというときに強い人間は、本当に、良い人なのだろうか。多くの人が、いざというときに人の本性が現れるというが、それは真実なのだろうか。そんなことを考えているとサンの声が聞こえてきた。

「そこにいるのは誰だ」

僕は見つかってしまったのだ。僕は恐怖で動けなかった。