私の説明は、人事方面にさっぱりウケないんです、という講師をエレベーターまで見送り、Keiさんと石橋さんが執務室へ帰っていく。

「お疲れさまでした」石橋さんが上司のほうへ顔を向ける。

「スキル研修は、ダメだっていうことなんでしょうか?」

「いや、職能のリスキリングは必要だと思うよ。あの講師が言っているのは、必要だけど、創造的に働くには充分ではない、ということじゃないかな」

「わたし、あのひと、なんか癪にさわるんです……でも、ちょっと気になる」

「なんか癪にさわるんですよ……でも、気になる」Keiさんが、ビールグラスを空ける。

「癪にさわるのは、痛いところを突かれたからだろ?」ネイビーが、新しい瓶ビールの栓を抜く。

「気になるのは、マトを射ているからだろ?」兄が弟のボトルを横取りする。

「おれはおまえの話を、ふんっ、と思って聞いていたんだよ。言わせてもらえば、創造性のない建築屋なんてあり得ない。職人のおじいさんだって、毎日、切磋琢磨しているぞ。

キミたちサラリーマンは、実に〈よく回る歯車〉として躾けられ、魂を抜かれてアンドロイドみたいに働いているんだよ。創造性が深刻な問題になること自体、おかしいだろ」

弟が、兄から自分のボトルを取り返す。