一緒に来たサラダを取り分けてくれる理子に、くるみは口を開いた。
「最近、仕事はどうなの? また上司と喧嘩しながら?」
「そう。実は今日も先輩と言い合いしちゃったんだよねぇ……」
理子は苦笑いを浮かべた。
「理子って勉強とか仕事のことに関しては、1ミリも妥協しないよね。ほかはすごく気配りとかするのに、そこだけは容赦ないっていうか」
大学時代も教授と言い合いをしたり、バイト先のリーダーと熱く議論をしたりしていたと聞いたことがある。
「うーん……まぁ、そうかもね。なんか、仕事は特に好きなことを選んだから。やりたいこともあるし、やっぱり、好きでやってることだしね。私は今の会社でやりたいこともたくさんあるから、仕事には妥協できないって思っちゃう」
「今は、どんな仕事してるの?」
「新しい動画のメディアを作ってるの。まだまだ出してる動画の数は少ないんだけど、今マーケチームと一緒に、どうしたらそのメディアを広められるかを考えるのがメインかな」
「へぇ~なんか、今どきの会社だね。うちの上司なんて、Instagramのアカウントも作れないよ。前のクライアントからCMをInstagramに載せたいって言われてあたふたしてたもん」
「まぁ、そりゃうちはITがメインだからね。今もどんどん新しい事業をやりたいって社内公募も活発にやってるし」
なんでもかんでもSNSをやればいいってものでもないが、自分のいる会社は平均年齢も高いし世の中からは遅れてるんだろうなとくるみは思う。
「そういえばね、今度同期みんなで集まろうって話になったんだけど」
「うん」
「新卒のときは、同期なんて150人くらいいたのに、もう20人くらいしかいないんだよね。同じ東京本社にも6人しかいないんだって」
「え~! めっちゃ減ったね。5分の1以下? まぁでも、もう29歳だから……新卒から7年も経ってるのか」
「7年かぁ……まぁ、そりゃ減るか。でも、ちょっと感慨深くなっちゃったよ。確かに、私も何人も転職する同期を見送ってきたからなぁ……」
若い会社は、よくも悪くも新陳代謝が高い。色んな人が入って、色んな人が抜ける。くるみの会社は、その逆だ。上が詰まりすぎていて、肩書もつかない。
「それで、今度東京本社にいるみんなで会うんだけどさ。その人達が本当に絡みなくてね。会社でも関わりがない人ばっかりだし、私みんなの名前と顔が一致してないかもしれない」
次回更新は7月17日(木)、11時の予定です。
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