サッカーを始めたきっかけは、幼馴染のタケの影響が少なからずある。彼との出逢いは、私が物心つき始めた、3、4歳の頃。親の離婚により引っ越してきた街で、私の自宅前の道路を挟んで、目の前にあった家の末っ子だ。同い年ということもあり、保育園は違うものの時折遊んだり、彼には年上の兄が二人いて、よく道路でサッカーボールを蹴ったり野球のマネごとをして、遊んでいる中に交ぜてもらっていた。

一緒に地元の小学校に入学し、彼が兄の影響で少年野球チームに在籍するのを追いかけるように、私も同じチームに在籍した。彼が小学校のサッカー倶楽部に入部したら、私も一緒に入部し、野球の練習がない日は、一緒に毎日ボールを蹴っていたものだ。

彼は身長は低かったが、運動神経は抜群だった。野球をやらせればエースで4番だし、運動会ではリレーでアンカーだし、サッカーでも10番だった。

それに比べて私は、ライトで8番だし、徒競走は万年ビリだ。サッカーだけは彼の相棒として9 番だった。

私達は同じ地元の中学校に入学したが、サッカー部がなく他校出身の同級生達と一緒にサッカーチームを結成することになり、そこでも「あの、小学校のタケだよね? 覚えてるよ! 対戦した時からメッチャクチャ上手かったもん!」などと、タケはチームメイトからの言われようで、みんな、私のことは対戦記憶に全くない。それくらい実力の差がある子だった。

その幼馴染のタケのパスを、何年ぶりかで受けてトラップをしようとした瞬間、右脚に違和を感じた。

なんのプレッシャーもない、何万回とトラップしてきた平凡なパス。インサイドに軽く触れるだけだ。身体に染み込んでるはずなのに、後ろに逸らした。

次回更新は7月10日(木)、20時の予定です。

 

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