ティーナは、ジョシュの事をぶん殴っていた。目の前で情けなく倒れているジョシュを見て、我に返ったティーナは冷汗をだらだらと流している。

「ど、どうしよう?」

「大丈夫だよ。まだ息はあるし、気絶してるだけだ」

「そ、そっか……」

ティーナは安心したのか、深くため息をついた。そして、ジョシュに「ごめんね」と言い、近くの木の下に寝かせた。

そうして、幼虫の気持ち悪さやら人を気絶させてしまった罪悪感やらが消えた。

「……ごめんね、あーし、ちょっと寝てるね」

とても複雑そうな表情で、ティーナは眠りについてしまった。どんなにショックでも、早く眠れるらしい。こうして、ログは一人になってしまう。とりあえず、二人が寝ている間に食料の確保や、今日はもうここで泊まることになりそうなので、火を起こすための枝を集めてきた。

しかし、二人は一、二時間ほど待っても起きない。なんならティーナは変な寝言まで言い始めた。

「中の下って、なんなの……平均より下とか、ふざけんなよマジで……」

二人が起きるまでわざわざ頑張って働いているのが面倒くさくなってきた。そして、もう寝てしまおうとログは近くにあった木を背もたれにして座り、目を閉じた。

『こんなことになるなら、幸せにできないなら……あなたを産まない方が、ずっと、ずっと良かった……!! あたしの人生返してよ、お願いだから、もう消えてよ!!』

ログの脳裏に、ヒステリックな女性の声が響く。

次回更新は7月11日(金)、12時の予定です。

 

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