ティーナは眠かったようだが、ログは少しも眠くなかった。早く朝になってくれないかな、とぼんやり空を眺めていた。
その時だった。
「はあっ……? なんだよ、あれ……!!」
まるで怪獣のようにとても巨大な生物が視界の端に映った。その生物の背中には、今まで地面だと思っていたもの。木や建物の残骸……陸地が、そのまま乗っかっていた。
その生物は、くすんだ黄色い目で、こっちを見ていた。
「ログ!」
目を開けると、眠っていたはずのティーナがログの目の前にしゃがみ込んでいた。さっきまでの光景が嘘だったかのように辺りが静まり返り、いつの間にか空は青色に戻っていた。
ああ、あれは夢だったんだ。そうログが安心していると、ティーナは「ログってば!」と再度言った。
「どうかした?」
「あ……いや、なんでもないよ」
すると、ティーナは立ち上がった。
「そろそろ行こう。太陽が真上まで来ている。もう昼過ぎだよ」
「あぁ、わかった」
ログは戸惑いながらも頷き、いつもの旅路に戻った。今、ティーナ達が歩いている森は、静岡につながる唯一の道だった。
ナギサに教えられた、今通っている、太平洋側を通る一つ目のルートも、日本海側を通る二つ目のルートも、どちらも日本アルプスを通らない。なぜならあそこを通ることは過酷すぎて不可能だから。今、歩いているこの森を抜ければ静岡に着き、そこからは比較的自由に進める。だが、静岡に着くためにはこの森しかないのだ。