「この森を抜けたら多分、静岡ってとこに行けるんだよね。富士山ってどんな感じなのかなぁ?」

「富士山……なんかこの前、お前言ってたな、そういえば」

「え、いつ?」

「確か……梅雨頃だったはずだよ。日本一高い山だって言っていた」

「ああ、言ってたねぇ、そういえば」

空を見上げ、大きなあくびをしながら言う。その様子を見てため息をつきながら、ログはティーナにジョークを交えながら話しかける。

「なんだよ、もう眠いのか? 赤ん坊じゃあるまいし、それとも赤ん坊ならおぶってやったほうがいいか?」

「赤ん坊じゃない! なんなの昨日から! ガキだの赤ん坊だのクソガキだの!」

「クソガキは言ってなくね?」

「あ、そうだった」

ここ最近毎日のように喧嘩をしている気がする。普通なら毎日喧嘩なんて、もうイライラしてしょうがないが、なぜかあまり苦ではない。まさに、「喧嘩するほど仲が良い」という典型だ。

「あっ、出口だ!」

木に隠れて日の光が射さなかった森の先、明かりが射している所が見えた。おそらくそこが出口だ。

「やったぁ、ようやく……」

喜びでいっぱいのティーナたちだった。

しかし、その喜びは一気に絶望へと変わった。

「……え?」

出口だったはずのそこは、木などが土砂崩れのようになぎ倒され、ふさがっていた。

次回更新は7月8日(火)、12時の予定です。

 

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