おかしい。今はもうすでに十七時くらいのはずなのにまだ全然明るいし、すごく暑い。
(これだから夏は嫌なんだ……)
蚊がいるし、他の虫もたくさんいるし、暑いし…… そういえば、ナギサはロボット故に全く虫にも刺されず、暑さや寒さに苦しむこともなかった。蚊に刺されて所々腫れているティーナを横目に、「どんまい」と言われてもあんまり嬉しくない慰めの言葉をよくかけていた。
羨ましいという気持ちと「自分は刺されてないからって」という八つ当たりにも近い怒りで、夏はほかの季節と比べてイライラしていた。まぁ、ナギサに悪気など一切なかったから、そのイライラをぐっとこらえていたが。
近くに、日の当たらない木に囲まれた洞窟を見つけたので、そこで今日は過ごそうということになった。
「おじゃましまーす」
「誰もいないんだから言う必要ないだろ」
洞窟の中はひんやりと冷たくて、さっきまでの暑さが夢のように感じられた。汗ばんだ体に冷たい空気が這って、一気に体中の温度が下がる。洞窟の中は、落ち葉もゴミも一つもなく、まるで誰かが定期的に管理しているようだった。熊かなにか住んでいるんだろうか? いや、ならもうちょっと汚いか。
(涼しいっちゃ涼しいけど、水とかないかなぁ。喉渇いた……)ぽちゃん、ぽちゃん。
「え……?」
洞窟の奥から、水の滴る音が聞こえた。
まさか、そう思って音が聞こえるほうへ向かった。奥に行けば行くほど洞窟から光は消え失せていって、転ばないように、十数メートルもないような道を慎重に進んでいった。
「うわっ、冷たい!」
足元にあった水たまりに足をつっこみ、ティーナは小さく悲鳴をあげた。
次回更新は7月5日(土)、12時の予定です。