【前回記事を読む】「300年前までは、人間もたくさんいて文明も栄えていた」という事実。当たり前の知識だと思っていたけど…知っているのは私だけ?
第二章 旅立ちと仲間
当たり前のこと
「そうだなぁ……あーしが赤ちゃんの時、どっかに捨てられてたらしいよ。それをナギサが拾って、育ててくれたみたい。あとなぁ、ナギサは落ち着いた人だったな。人というかロボットだけど。あんまり気持ちが顔に出ないっていうか、クールな人だったね」
「へぇ。他に教えてもらったこととかないのか? 城跡以外で」
「ありすぎて言い切れないな。そうだな、割とどうでもいいことも教わってたな。特に卵の殻を割った時に殻が入りにくくなる方法とか……」
「ん? 待てお前、まさか全部暗記してるってことは……」
「え、全部覚えてるよ? こう見えてもあーし、記憶力いいんだよねっ!」
「マジか……」
ティーナがナギサとどれくらい一緒にいたのかはわからないが、「赤ん坊の時捨てられていたところを拾われた」と言っていた。少なくとも、十年以上は一緒にいるだろう。
ティーナが日ごろから暇さえあれば口にする、ナギサに教えられた知恵の数々。風邪にかかった時の対処法など、役立つものもあるが、それは全体の一割程度。残りの九割は、「白熊の地肌は実は黒い」とか、そういうくだらないことだ。どちらにせよ、教えられた情報量は膨大だ。それを全て覚えているなんて、記憶力がいいと言えるレベルを超えている。
まるで、人間じゃないみたいだ。
「ナギサは信じられないぐらいたくさんのこと知ってたからねぇ……。よし、それじゃあ行くとするか!」